断片



シェークスピアの「真夏の夜の夢」は音楽も出演者が奏でるという演出だった。

音楽担当はドイツの指揮者コンクールで優勝した新進気鋭の音楽家だが、最近生まれた赤ん坊の話など気さくに雑談をしてすぐに打ち解けた。

いざ今日は音楽の練習となり、どんなプランでこの壮大な戯曲を彩どるのか、与えられた楽曲楽器を短期間でこなせるのか、期待と不安の待ち受けるなか彼はよく見慣れた楽器を取りだした。

この僕が作った曲をぜんぶ縦笛でやります。
歌もあります。



縦笛って…



それ学校の音楽で使ってるやつ?

それで、音、
聞こえますか?


当時1000人ホールでもマイクはいっさい使わない。



はい 新鮮です!
自分たちの音楽だから それでいいのです!


指揮者は終始にこやかに嬉しくたまらないといった顔でわずかな質問に答えた後、自ら縦笛を吹いてみせた。








作るという基本を教わったのだとおもう。