徒然部の部屋



 


一寸夢



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中学の頃 坂の途中にあった城山公園の入り口に小さなタバコ屋があり 軽く駄菓子も売っていてよく使っていた


中1の時はお婆ちゃんが店番にいたが次の年は愛想のない娘が店番になっていて 高校の頃はもう閉まっていたその店が久しぶりに夢に出てきた




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こんなに若い娘はいなかったはずだけどエプロンをして店の前で掃除をしている


ふと何かを思い出したように店の奥に引っ込んだ


そうだ ここから送ろう

赤い小さなポストに頼まれていた荷物を押し込むと面倒事が片付いた安堵感が広がる

早くこうしとけばよかった



店の電話が鳴り 誰も出ないので仕方なく受話器を取ると 宛先が違うと怒鳴られた


たしかに間違えた


ポストに手を突っ込み 先程の荷物を取ろうとガタガタしているとフタが外れ中が見れた


よし もうちょっと


荷物の端を小指に引っ掛け引き出す

と 違う手紙や荷物も一緒に出てきた


ビニールに包まれたそれは タバコと手紙 ライターと現金

裏を返すと万札が折りたたんである


もう一つは押し花にエッセンシャルオイルと指輪 こっちはいいや とポストに戻し 万券の入ったビニール袋をポケットにねじ込んでポストの蓋を閉める


携帯にしては大きな受話器を手にエプロン姿の娘が戻ってきた


対象は〇〇地区を移動中 確認 マーク中 田辺班 石塚班が包囲してます


店裏の坂下を見ながら早口で叫んでいる


無線?


警察?


どうやら ポストの罠にかかった模様 経過観察中


罠?

やっぱり娘じゃなかったか

あ、いや 今はそれよりもこの場所から…


対象が動きます


トラップ発動しますか?


了解!発動させます!


何かスイッチのようなものを出した


ヤバいかも 早く逃げなくては


娘の死角に入るような角度でゆっくりと離れる


かすかに動いたかと思ったらポストが爆発した


そうか さっきの指輪のケースか


今月 ちょうど足りなさそうだったんだ 助かった


店の前の坂道を下りながら タバコとライターと手紙は橋の袂のポストに突っ込みポケットに手を入れて口笛を吹いた








11月のメタクシュ お茶会シアターは朗読 夏目漱石【夢十夜】

朗読は久しぶりで 夢十夜も知らなかったので どういう朗読になるか楽しみでした

静かにゆっくりとした少し低い声が熊ノ沢スタジオに響く

一番最初に感じた事は 音楽のようだと

リズムというか歌を歌ってるような不思議な文節の切り方が新鮮でついつい聴き入ってしまう

ゆらゆらと揺れる声に揺りかごのような また文節の切り方にハッと引き戻され夢心地の手前で寸止めされるような寝ようと思う人には生殺しのような心地良さを感じ 金曜日の夜は最後までリズムを追う自分がいた

二回目の日曜日はそのリズムにすっかり酔い 途中から船を漕ぐハメになってしまい面目無い姿を見せてしまった

たっぷりと堪能させていただきました



                                      月代


料理部より

料理の仕込みで柳沢コミュニティセンターの厨房を使わせてもらえるようになって3回目?
ずいぶん慣れてはきたけれど いざ当日はあれが無い!これが無い!とまだバタバタしてしまう
次回こそ 完璧なセッティングで滞りなく仕込みを終えるようがんばろう


小さな春


横顔


 



4年ぶりの大雪にすっかり落ちてしまうと思われた薔薇は物憂げな横顔を見せてはいるがなんともなかった


こちら側からはまだきれいに見える



新芽が出てきたので剪定


ぐっと小さくなった幹に鉢が大きくなったかのような錯覚を覚える




                              月代




 



年越しの薔薇

 





冬のメタクシュの前だったと思う



可憐な華やかさで 今年最後の薔薇になるだろうと見ていた花が年を越し今日までこの姿で



写真を撮り 声をかけ 水をやり お礼を言った




2時間後 花びらは半分になった





                                                   月代







 



料理部

冬のメタクシュから早2ヶ月 今更感がありますが懇親会のメニューなどを
たまたま 今回は和風になりました
肉豆腐
イカと里芋の煮物
ぶり大根
カブとキュウリとキャベツの塩こんぶ和え
ちゃんこ鍋
次回は春なのでもう少し色合いのいいメニューを組みたいと思ってます
料理もメタクシュの作品の一部と意識して 満足のいくものを目指します
どうか 楽しみに

ある休日



姪っ子から ママがスーパーアリーナで岩手のビールを売ってるとLINEがきた


意味がわからない


よくよく聞くと けやきひろば秋のビール祭りというイベントが今年は埼玉スーパーアリーナでやる事になり 毎年やるそのイベントには義妹の弟が知り合いに頼まれ岩手の花巻ビールの売り子をやっていたのだが本業が忙しく義妹が出るようになって何回か行われてるとの事



そういえば 去年も夏にけやきひろばでビールのイベントがあると言っていた


めんどくさいし どうせビアガーデンに毛の生えたようなしょぼいイベントなのだろうとタカをくくって行かなかった


姪っ子には遊びに行くと言った約束も就職祝いもしていない負い目がある 軽く 行く!行く!と約束してしまった




待ち合わせに 妹二人を連れてきたところで軽くめまいを感じたが 普通に考えれば まぁそうだろう



会場の埼玉スーパーアリーナに入ると物凄い賑わいに度肝を抜かれつつ その出店舗の多さとグレードの高さに脱帽



見たことも もちろん飲んだ事もないビールが それはもう数え切れないくらい揃っている



小さなカップでも飲み比べもいろいろある



ところが どれを飲んでも なにかこう落ち着かない



本来の意味でのビール党ではないんだな



姪っ子たちのノンアルコール飲料を探す方が難しかったが 食べ物をチェックしながらの会場巡りはそれなりに楽しかった



義妹が取ってくれた有料席に陣取り最近の動向を報告という形でそれぞれから受け あっという間にイベント終了の7時になった



次女の 就活が上手くいかないとの相談を受ける中 長女が この前クラスメイトの男の子達と遊んだ時 今日は財布を開く気分じゃないなぁと言って次女はすべて奢ってもらったんだよ!と聞き やっぱり天性ってあるよなぁ でも学校には水商売の求職は来ないよねと長女と腹を抱えた









鶏すき



無難なところではあるが 素材を吟味すれば満足いく鍋になる

ここから これをどう発展させるか

または 違う素材で試すか


思索しがいがある






調理部より

 






メタクシュの台所を預かる身として 最近どうもパターン化してきたように感じている

冬のメタクシュに向け 新たなメニューの開発と勉強を始めますので 平にご容赦を

メタクシュの内容と共に進化するメニューを目指します



                                             月代



一寸夢




いい宿が取れたと同窓会を宇都宮で開く事になった


やけに若い連中もいて 法被みたなのを着てる


広い座敷で隣との境もなく けっこう自由に入り乱れてる


わたしは樋浦と何かを話してて見てなかったが入り口が騒がしい 誰か来たようだ


沖縄の人?4、5人で誰かを探してる

同級生が嬉しそうに手を振る

待ち合わせてたのか


孫がお世話なってます のように端の方からひとりひとりに握手をしてた


その順番的には最後の方だし 樋浦との話しも途中だから振り返ると ひと通り挨拶を終え帰られるようだ


軽く会釈でもと思い玄関の方へ行くと 突然くるりと振り返った


つつつと寄ってきて満面の笑みで右手を出された


手の平が異様に長く 指が極端に短い


でも ふくよかでツヤツヤとした右手に吸い寄せられるように両手で握ってしまった


あなたが井之上くんね!


え、あ、はい…


ガバッと抱きしめられる


と 熱いものが込み上げてきて 気づくとボロボロ泣いていた



よかった あなたに会えた



何かわたしの持ってた情報を吸い取られたような感じで不思議だった


同級生に もしかしてユタ…なの?と聞くと

少し慌てながら オバーは…と身振り手振りでそれをまとめてる人とでも言いたげな でも言えないみたいに最後にはがっくりと肩を落としていた



おばあちゃんと息子?(背は低いが身体が大きく仕えてる人のよう)は帰りのバスに乗り大きく手を振っていた


まだ 少し話しをしたかったので残った家族たち?に伺おうと思ったら

明日から娘のひふみが来るから

カメラマンなんだよと宴会のように大騒ぎをしていた



やっぱりおばあちゃんに聞くかとと外に出ようとすると あらいぐまラスカルがリメイクされて今日から放送なんだと興奮した口調でリモコンを握りテレビを操作してる樋浦に こいつこんなだったっけ? と思ってる間にバスは出て行ってしまった










起きると全身がビリビリと痺れたように でもとても軽くなっていた






                                           月代


三峰


寒い

電車で二時間半 バスで一時間揺られ駐車場に着くと凍える間もなく芯まで冷える

本殿までの道のりが遠く感じ 近くのメシ屋に飛び込んだ

熱燗と味噌おでん 虹鱒の甘露煮!

客もそれほどいない時間帯なのにバタバタしてるのは厨房の奥から大きな声で だから停電だって!と聞こえたのが原因か


普段呑まない熱燗が身体に沁み渡る




途中遥拝殿に寄り吹き上げる寒風に火照った頬を晒してると駐車場を降り震えてた自分を思い出し 少しおかしかった



やっぱり参拝客は少ない


夏は行列を作っていた本殿手前の御神木に誰も並んでない

両方たっぷり触れてきた


ここのほったらし感溢れる寒さと空気は岩手に似てる


それでいて注意深く澄ますと何者かの気配を感じる




また 来よう



                                                  月代    

よりみち



今年のメタクシュは、私にもお声がかけていただきそうでありながら

実は、こんなことをしていました(8ヶ月ほど受験生をやりました)

会社に言われて取得した資格ですが

資格を取ったところで仕事の内容が変わるわけではなく

給料が変わるわけでもありません

頑張った成果を評価してもらえないのは寂しいですが

日常が変わらない、ということに安堵しております

また、自分のやりたい音を追求する時間を計算すれば、持てるはずです


両親の体調を見やりながら


今までごめんね


とピアノに話しかけて


さあ、楽譜をひろげ、ドレミ。


11/3のオペラ名古屋公演を見に行ってきました

「いつやるの?今でしょ」っていう言葉が朝陽と共に

目覚まし時計を鳴らしました


いつかまた、演劇部の皆様のお手伝いが出来るようになることを来年の目標に

今からしっかり、基礎訓練を頑張りたいと思います

20回目のメタクシュ、おめでとうございます

素晴らしいお客様にたくさん恵まれますように


服部 清美












一寸夢






これから胴体着陸を試みます


乗員の方々衝撃に備え安全姿勢をおとりください




皆 覚悟はしててもざわめく客室に でも それでもこのくらいで済んでいるのは上等なのかもしれない









力不足だった



いや 彼の意思だったんだ




3回目の胸のランプは灯らなかった




最上級アンドロイド



あの優しげな語り口の教授がアンドロイドだとは微塵も感じたことはなく 肋骨の間のランプを見せられなければ今でも信じられない



不規則な明滅が機能不全なのを訴えている


もっと ちゃんとした設備があれば…


歯がゆくもあるが 記憶 外部装置のスペシャリストとしてはなんとかするしかない





このまま逝かせてください



教授がたどたどしく語る





そんな…




もう十分生きました



生徒もたくさん育てました



私は満足です






そうであろう


実際 政府から依頼された折 事務的というより肉親を助けてもらいたいと言うような必死さが伝わった



空港には救急車も搬送先も最新鋭の設備がある病院になっている


そこまで行けば確実に助けられる



一回は乗り越えたじゃないか



頑張るんだ




ガタン!


エレベーターで身体が置いていかれそうな感覚とかなりの振動



補助的に繋いである教授の生命維持装置の揺れを押さえる





今までありがとうございました




軽い悲鳴とパニックの中 教授は静かにつぶやくように言った




大丈夫です


空港には全て準備が整ってます




答えにはならない返事をし 情報確認をする




貨物室に爆弾がセットされ 車輪が出せない?


燃料ももれた?




半分は政府関係者の乗るためか 的確な情報と迅速な対応 それほどパニックにならないのは流石だな




教授 後ろへ



足を前の座席の背に 身体はくの字に 両手で後頭部を支え丸くなってくださいね






どんどん高度は下がり もう道路スレスレになっている



目の前に電信柱


ゆっくり右に旋回し 左の翼の根本にわざとぶつけた


滑るように左に回る



もう着陸してたのか!





素晴らしい!






所々から上がる喜びの声と二日の休みを告げるアナウンスが場を盛り上げた




教授 大丈夫…




少し笑ったような横顔を傾けながら 胸のランプが静かに消えていった









夏のある日




 

鉤爪を立て 風の行方を追っている龍が弾けるように駆けている


身体は柔らかく俊敏で珠になり鞭になり 雲になり


どこまでも届く



狼がいて 天狗がいて 龍のいる三峰



その空気は恐ろしく軽やかで遠くまで響く







 


三峰散策

以前より興味のあった三峯神社に向かう
ここはある意味厳しい神社なので行ける資格がないと感じていた
三峰口駅からバスに揺られ小一時間
駐車場から見た景色はものすごく細かな粒子と透き通る青と緑に圧巻させられた

日本でも数少ないと言われる三つ鳥居
両脇には狛犬ではなく狛狼
犬とは明らかに違うデフォルメをされている
駐車場からここまでは夏の熱気を感じるのだが 鳥居をくぐった瞬間 ひやりと山の霊気に包まれる
ここまで明確に分かれると確かに神域かと感じさせられる
参道を上りしばらく進むと右手に遥拝殿がある
ここの突き抜け感はものすごい
けっこうな勾配の階段を登りきると前から吹き抜ける風と景色に一瞬意識が持っていかれる
山を越え 峰を伝い 龍脈に沿って吹き抜ける風の力強さは身体に付いた余計なものを吹き飛ばすかのように清々しく浄かだった
遥拝殿を降り 本殿へ
また少しだけ粒子が細やかになったような印象を受ける
人がいて 話し声や子供の声も賑やかなのだが 静謐な空気がそこにある
明治神宮のような人工的な静謐さとは違う自然の力 山や木々 それ以外の何かに護られているような落ち着いた空気に満たされている
本殿手前のしめ縄が掛かっている二本が御神木
触れられる御神木とのことで行列が出来ていた
近くで見るより少し離れて見た方がこの御神木のエネルギーを感じる気がする
あまり近くだとかえって感覚が麻痺するのかもしれない
触れると下から上に向って流れてるのがよくわかる
帰りに資料館のようなところに寄った
宮沢賢治が見た星空は未だに見えるのだろうか?
今度は泊まってみたくなった



                                                                  月代

第19回メタクシュ




今回は地元の方はもちろん 遠方からのお客さまが多く印象的でした


お茶会もいろんなお話しに花が咲きとても刺激を受けました



これからが楽しみです





月代






内緒話




 










仲のいい母娘のよう





どんな話しをしてるのだろう












月代








添え木





鉢に植え替えて初めて咲いた花


とても大きく その重さで枝がしなってしまったので添え木をしました



久しぶりの雨に元気いっぱいで嬉しそうです











月代







薔薇




小さな頃 とても嫌いだった



刺もこれみよがしな形も キツくクドイ香りも



なんて傲慢であけすけな刺激の強い花なんだ






大嫌いだったのに







こんなに可愛いなんて




とても不思議だ









月代







手間




漬かりすぎたお新香や古漬けは 細かく刻み針生姜とミョウガ 胡麻と鰹節で和えると一品料理で生き返る


昔 フレンチのシェフに教わった


そのシェフは昔のシェフから教わったと言っていた



職人は手間を惜しまないものだと言っていたのを思い出した







月代





ぬか漬け

一体 何回失敗しただろう
およそ失敗するものではないはずなのに
出だしはとても快調なのだが だんだんと香りも無くなり糠が臭くなってベタベタになってくる
よく その家毎に味が違うとか昔のおばあちゃんは他人に糠床を触らせないとは聞いていたから もしかすると自分は向いてないんじゃないかと落ち込んだりもした
大きめのタッパーで漬けてるから毎日ボールに移して底からかき混ぜているのに…
ずいぶん考えた
あまり手をかけすぎない方がいいのかと思ったりもした
どこがいけないのか
そして ふと気がついた
もしかして ボールがいけないのか?
ステンレスのボールを使っている
まさかとは思ったがプラスチックのボールに替えた
すると少しずつ変化があった
香りが戻ってきた
本当にそれが原因かはわからない
でも ようやく茄子がこの色になった
やっとスタートに立てた気がする






月代